2019年5月24日金曜日

5.9 中日関係と中国関係事情について 中国大使館 倪健先生講演概要

中日関係と中国関係事情について(概要)
20190509
中国大使館 政治部 倪健


 最初に、中日関係について、お話を始めます。
  ご存知のように、中日両国は二千年余りのお付き合いの歴史があり、近代には、お互いに学びあい、また、戦争をし、敵視しあいの歴史もありました。そういう歴史の経緯で、中国から見る日本の姿が大変親近感のあるものと同時に、複雑な異様感もあるのは事実であります。去る2018年、日本は明治150周年を迎えました。この明治維新によって、日本が欧米に目を向けるようになり、欧米化、脱亜入欧という時代に切り開いたと言われています。その後、日本はアジアの近隣諸国に対立と戦争の時期が長く続きました。19458月に戦争が終わっても、中国との関係はその対立と敵視状態が続き、1972年9月までの27年間も政府間交流がストップしていました。その後に、両国の国交正常化になり、平和友好条約が結ばれ、平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築から、戦略的互恵関係の包括的推進にともに努力しているところでございます。
2017年の春以降、習近平主席が第一回「一一路」国際協力サミットフォーラムの期間に日本の二階俊博自民党幹事長が率いるAll Japan代表と会見したのを契機に、双方は一連の積極的な往来を持続的に展開し、両国関係改善の勢いが大きく強まってきました。その後、安倍首相は何度も明確に公の場で対中関係の改善、特に両国の指導者による相互訪問の再開について積極的な姿勢を示しました2017年の9月に中国大使館主催の国慶節の祝賀パーテイに安倍首相が出席し、日中関係を改善するため、李克強総理の訪日、安倍首相の訪中、習近平主席の訪日といった三つのロードマップを提出しました。去る2018年は中日関係において、重要な改善と発展する年であります。習近平主席と安部首相との再会が実現され、両国総理の相互訪問も実現によって、中日関係が正常な軌道に戻りつつあります。
この両国関係が正常な軌道に戻ったという事は、三つのポイントがあるかと私は思います。
一つ目は両国のハイレベルの政治交流です。国家元首や政府首脳また政党、議会の政治指導者同士の定期的な交流を行う事です。これが今両国で、実行中であると思います。
二つ目は両国は政治体制や価値観等の相違を乗り越えて、経済・文化・社会などの分野で、お互いに前向きに交流・協調・協力する事であります。正に隣国同士で、パートナーであり、お互いに脅威にならない意識を実際のお付き合いの中で実行していくことです。
三つ目は民間や地方の国民同士交流の活性化であります。取り分け、中日関係において、民間先行(政府より民間が先導する)、民が官を促す(民間が政府を促進する)、官民一体や官民共同という優れた伝統があります。
双方の共同の努力の下で、現在、中日関係は新たな情勢を迎えています。両国は各分野においての交流と協力は更に深化され、貿易額が3276億ドルに達し、相互人的往来も1100万人にもなりました。中日関係の安定で健全な発展を図る上で以下の三つの新しい有利な条件があると私は考えています。
 一つ目は両国指導者の重要な共通認識によるリードです。2014年11月、中日双方は4項目の原則的共通認識で合意し、両国関係の改善プロセスが開かれました。 二つ目は両国の実務協力の潜在力が今後一段と引き出されることです。長年の発展を経て、中日の経済貿易協力はすでに密接で、互恵ウィンウィンの良好な局面が出来上がっています。 三つ目は国民感情に新たな変化が現れたことです。中日関係の世論調査データおよび日本の内閣府が毎年発表している「外交世論調査」の結果などが示しているように、中日両国の国民感情は2016年から悪化に歯止めが掛かり、改善に向かい始めています。日本の国民の中国に対する好感度は依然として比較的低い水準にあるものの、「中国に対する親近感」、「現在の日中関係に対する評価」および「日中関係の重要性」という三つの質問に対する各年齢層の回答に分化が見られ、特に18歳から29歳までの日本の若者の間でこの三つの質問に対し肯定的な回答を寄せる割合が持続的に上昇しているものの、五十代、六十代の相互交流が不足している事に私達は注目しています。
未来を展望し、中日関係が正しい軌道に戻ったことを踏まえて新たな発展を得るのを確実にし、新たな前途を切り開くためには、双方が引き続き互いに歩み寄り、戦略・安全保障面の相互信頼を絶えず増進し、中日関係の発展方向を建設的にしっかりとらえ、実務協力の一層の広がりと深まりを図り、人的交流の強化を通じて中日関係の社会と民意の基礎を固めるべきです。また、重大で敏感な問題を確実かつ適切に善処し、両国関係が再び妨害を受けることのないようにする必要があります。安倍首相は昨年、日中関係が競争から協調へと何度も表明しました。中国側はこの態度表明が日本側の対中政策と具体的な行動で示され、両国関係の改善・発展を持続的で絶え間ないプロセスとすることを望んでいます。

 次は中国の関係事情についてお話したいと思います。
 去年は改革開放40年を迎えましたが、この40年間、中国の変化はさまざまですが、今日は二つの事を皆さんと交流したいと思います。ひとつは貧困撲滅です。もう一つは腐敗撲滅とクリーンな政治建設です。この二大事業は政権党の中国共産党の主導の下で、もっとも大きな成果を収めた事業であると言われています。
 貧困問題は殆どの発展途上国は持っている深刻な社会問題です。先進国も多少持っていると思います。中国は40年前に農業生産性が低く、農民の生活水準が全般低いものでした。大半の農民は貧困状態にありました。この40年で、農村貧困人口は7億4000万人も貧困状態から脱出し、年間の貧困脱出人口は約1900万人にも上りました。近年来、中国の党や政府は全国の党組織や国から、各省、各市、各県まで、資金の援助すると同時に、百万人も参加する貧困協力チームを作り、現場へ行き、指導と協力を行ってきました。また、東部の各直轄市や省は中部、西部の発展途上の地域と協力関係を結んで、助け合いを行ったりしております。2018年に、貧困人口は約3000万人に減り、大きな成果を収めました。中国の目標は2020年までに、全土の農民絶対貧困人口を失くし、地域貧困問題を解決する事であります。(貧困の基準は年に3000元との事)
 中国の貧困撲滅の実績は、SDGs(エス・ディー・ジーズ)国連が2030年までに解決を目指す持続可能な開発目標において、途上国にいい実験とモデルを提供したと国連からも高い評価をもらっております。この貧困撲滅事業に特に指摘したいのが日本の政府と民間から、多大なご支援とご協力がありました。中国から、大変感謝しております。
もう一つ腐敗撲滅とクリーンな政治建設です。中国では、40年前に改革開放期を迎えて、市場経済化による中国経済の急成長により、腐敗が顕在化したことから、1980年代から反腐敗運動が本格化した。2013年からは習近平総書記による「虎もハエも同時に叩(たた)く」反腐敗運動が展開されています。「虎もハエも同時に叩く」とは、習近平総書記が示した党内の汚職根絶について掲げたスローガンであり、幹部クラスの高級官僚も、末端クラスの下級官僚も、その地位を問わず、厳格に処分していくという方針をさします。長い間の政権与党として、中国共産党は先頭に立って、腐敗と戦い、中央政治指導者から、末端組織の党幹部まで、真剣に取り組んでいる事を表していると思います。その反腐敗闘争とクリーンな政治建設を党と国の生死存亡の緊迫課題として対応しており、中国現代政治の特徴であると言えるでしょう。中国の政治や発展は鍵を握るのが党であります。党が鮮明的に反腐敗闘争を続けいてきたこの数年間、党内や社会には腐敗できない、腐敗しようと思わないという効果がおおむね出ており、反腐敗闘争の圧倒的な態勢が現在形成されており、国民から評価され、大いに歓迎と称賛をいただいております。